人材育成

Column No.02

 三寒四温、春一番、冬から春へ慌ただしく気候が衣替えをしています。これと共にインフルエンザが下火になり、代わって杉花粉が猛威をふるいはじめています。数日前から目が痒く、クシャミがところ構わず出てしまいます。こんな時節、もう一カ月もすると桜が咲き乱れ、わが社にも新入社員が何名か入社します。社会人となってはじめての世界、期待と不安でいっぱいの新人たちがビジネスの世界で無事に離陸し、活躍するよう支援しなければなりません。

 まずは最初に、事業や商品の概念や用語、原理など基礎的な知識や技術、技能を学ばせる基礎教育を施します。そうした基礎的な教育の後は、OJT(On the Job Training)即ち、仕事を通じて知識や技術、技能などを習得させ実践的な能力を身に着けさせます。こうして育てていくことが一般的ですが、若者たちの成長の過程をみていると、学習する側の若者、教える側の先輩の姿勢によって、成長の度合いに大きな差が生じます。

 教えられる側は、受け身であってはなりません。教えられていないことでも知識や技術の習得に貪欲で、機会あるごとに調査し確かめ実践していくことです。これは特に専門性の高い仕事ほど重要なことで、教えられることは基本的なことに限られ、実務的なことや応用問題、上位の事項などは自身で遮二無二学習し、知識や技術を高めていくことしか道はありません。人生で自身が創造するところは僅かです。自らがアウトプットすることのほとんどすべてが、先人の知恵です。その知恵の上でほんの僅かだけ自身が創造できるに過ぎません。自身の能力を高めるにはまずは先人の知恵をできるだけ沢山吸収し詰め込むことです。その上で脂汗を滲ませながら考え、挑戦してはじめてわずかな創造ができ成長できます。学習、次いで実践、挑戦に遮二無二取り組むことが肝要です。
 人材を育てる側にとって重要なことは、新人に仕事を任せることです。本人のオーナシップのもとで、一定のまとまりの仕事を任せ、推進させることです。任せる仕事は、本人が頑張ってやっとできるレベルの仕事であることが肝要です。こうして任せた仕事の進み具合を見ながら、タイムリーにアドバイスし完遂させることによってさまざまな能力の向上が期待できます。単なる技術、技能だけでなく、仕事の位置づけ、着手する前の企画、計画の重要さ、外部環境との関係性など座学で教えられることの何倍ものことが学習させられます。

 権限移譲、よく聞く言葉です。極端な権限移譲は部長や課長のやっている仕事を、新入社員に任せることです。若者は、理解力に優れ、変化への対応も柔軟で、しがらみもありません。若者に上位者の仕事を任せることで組織の活性化、挑戦的風土が醸成されます。権限移譲に必要な条件は、若者への情報の開示です。実務的な情報、経営方針など意思を決定づける情報を開示することが必須です。開示することのリスクは、上位者の存在感が薄れることでしょうか?存在感はより挑戦的な政策を推進することで増強できます。

 穏やかな春の兆しを楽しんでいます。いつものことながら、春は浮き浮きします。目覚めの季節ですから。さーチャレンジです。

2015年3月11日

■本コラムを執筆したのは

株式会社ソフテス 取締役会長 鈴木忠雄
名古屋工業大学経営工学科を卒業後、川崎重工業(株)に入社。1972年にヤマハ発動機(株)へ移り、技術管理部長や舟艇事業部長を歴任。1997年に(株)ソフテス設立に参画し、2000年より代表取締役社長、のちに会長に就任。著書『経営改革のためのERP導入』で「ユーザダイレクト方式」を提唱し、経営・業務に根差したデータ活用の重要性を説き、企業経営の未来を見据えた活動を続けている。

■本コラムを執筆したのは

株式会社 ソフテス 取締役会長 鈴木忠雄

名古屋工業大学経営工学科を卒業後、川崎重工業(株)に入社。1972年にヤマハ発動機(株)へ移り、技術管理部長や舟艇事業部長を歴任。1997年に(株)ソフテス設立に参画し、2000年より代表取締役社長、のちに会長に就任。著書『経営改革のためのERP導入』で「ユーザダイレクト方式」を提唱し、経営・業務に根差したデータ活用の重要性を説き、企業経営の未来を見据えた活動を続けている。